
9月14日(現地時間)にアメリカ・コロラド州デンバーで行われた環太平洋諸国6カ国による国際大会「パシフィックネーションズカップ」(PNC)準決勝。世界ランキング13位の日本代表は、同16位のトンガ代表に62対24で快勝し、決勝進出を決めました。20日(同)、ユタ州ソルトレークシティにて行なわれる決勝の相手は2年連続で同9位のフィジー代表です。
マイルハイタウンと呼ばれるデンバーには、メジャーリーグの取材で何度か訪れたことがあります。ここにはコロラド・ロッキーズというチームがあるのですが、本拠地のクアーズ・フィールドはバッターズヘブン(打者天国)という別名があります。なぜなら標高1マイル(約1600メートル)の高地にあるため気圧が低く、ボールが飛びやすいからです。
蛇足ですが、ピッチャーにとっては地獄とも言えるこの球場で、ノーヒッターを達成したのは、後にも先にもロサンゼルス・ドジャース時代の野茂英雄さんだけです。1996年9月17日(現地時間)、この日は雨で試合開始時間が2時間も遅れました。あのぐしゃぐしゃのマウンドで、よく快挙を成し遂げることができたものだと、今更ながら感服いたします。
トンガ戦に話を戻しましょう。21対19で迎えた後半、日本は高地でのスタジアムの特性を考慮し、キックを多用するようになりました。これが功を奏しました。
まずは後半2分。敵陣でのラインアウトを起点に、スクラムハーフ藤原忍選手がトンガ守備網の裏のスペースにショートパントを蹴りました。これをフリーでキャッチしたセンターのディラン・ライリー選手がきっちりトライに結びつけました。
31分には自陣からセンター廣瀬雄也選手がロングキック。処理にもたつく相手にウイング長田智希選手がプレッシャーをかけます。サポートに入ったフランカーのティエナン・コストリー選手がボールを奪取し、フッカー佐藤健次選手が代表初トライをあげました。
いずれもキックする選手とチェイスする選手がうまく連動したことによるトライでした。
大会前、エディーHCは「バランスを取った攻撃をする」と話していました。「日本代表のアイディンティティであるランを仕掛けながらも、予測不可能なキックを駆使していく」とも。
それを受け、スクラムハーフの福田健太選手は「闇雲に蹴るのではなく、目的を持ったキックが必要。単にボールを手放すのではなく、再獲得するキック。そのためには全員でセイムページ(同じ絵)を見ないといけません」と語っていました。実際、41対5のスコアを記録した後半は、言葉通りの展開となりました。
翌日のスポーツ紙に、エディーHCが口にした次のコメントを見つけました。
<試合の中で対応できた。ハーフタイムで戦い方を変えてキックを使えた>(「日刊スポーツ」2025年9月16日付け)ところでラグビーのスタッツに「Kick To Pass Ratio」という項目があります。これはインプレー中のキックとパスの割合を表しています。キック1本に対し、パスを何本通したかを示しています。
参考までに今大会、日本の3試合(ラグビーサイト「ラグビーパス」参照)の「Kick To Pass Ratio」を紹介しましょう。
・8月30日 1次リーグ カナダ戦 キック1対6・5パス ○57対15
・9月6日 1次リーグ アメリカ戦 キック1対7・4パス ○47対21
・9月14日 準決勝 トンガ戦 キック1対5・1パス ○62対24
※日付はすべて現地時間
以上のデータから、3戦の中でパスに比して、最もキックの割合が高かったのはトンガ戦だとわかります。
決勝が行なわれるソルトレークシティも標高約1300メートルの高地です。準決勝に続き、キックの有効度が勝負のカギを握りそうです。
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