
リーグワンはレギュラーシーズンの日程を終え、5月22日から各ディビジョンの入れ替え戦、23日からプレーオフトーナメントがスタートします。D3の2位・狭山セコムラガッツは、D2の7位・日本製鉄釜石シーウェイブスと戦い、D2昇格を目指します。ラガッツは今年1月、東京五輪女子7人制日本代表元主将のバティヴァカロロ・ライチェル海遥(みよ)氏がチームスタッフとして加わりました。フィジー出身のライチェル氏は、力強い突破と鋭いステップを武器に、日本の2018年アジア競技大会金メダル獲得に貢献しました。現在はラガッツを裏方として支える彼女に話を聞きました。
――日本代表になった女子選手が、リーグワンのチームスタッフ入りするのは異例です。決断に至った背景は?
バティヴァカロロ・ライチェル海遥: 私が選んだ道が、これからの女子選手の選択肢としてなり得ることを示していければいいと考えています。ただ、それだけがラガッツへの加入を決断した理由ではありません。私はチームの親会社であるセコムに20年4月に入社しました。現役時代、たくさんのサポートをもらった御恩を何らかのかたちで還元したかった。会社の方に「スポーツの縁がここでプッツリ切れてしまうのはもったいないですし、何か会社に対して自分ができる貢献の仕方はありますか?」と相談したところ、チームスタッフ入りを提示していただいたことで、加入を決めました。
――ラガッツに加わって数カ月が経ちました。新天地での苦労は?
ライチェル: 私が22年から引退まで所属していた女子チーム(ながとブルーエンジェルス)は7人制がメインだったということもありますが、ラガッツとは規模感が全然違いました。ラガッツは選手を60人以上も抱えている大所帯ですので、最初は選手全員の名前を覚えるのも一苦労でした。練習中、チームスタッフがインカムを使用しているのが新鮮でした。ブルーエンジェルスでは試合のみでしたから。ラガッツに入ったのは、シーズン中だったので、ほぼ毎週のように試合があり、常に試合に向けた準備をしているせわしないイメージでした。また通訳のサポートとして、ミーティング等にも参加するのですが、常にチームが戦力、戦略のアップデートを図っているという印象を受けました。
――通訳をする上で、選手経験を生かせる部分もあるでしょう。
ライチェル: おっしゃる通りです。ラグビー用語がわかる分、未経験者の方と比べるとアドバンデージがあると思っています。ただチームごとに使っている用語がありますし、同じ言葉でもニュアンスが異なることもある。そこはメインで通訳を担当されている方に、「ここはどういうふうに伝えてますか?」と聞きながら、自分自身に落とし込むようにしています。
――言葉の強弱なども意識しなければなりませんね。
ライチェル: プレーのイメージは頭の中でできますが、言葉選びについては気を付けています。あまり自分の感情を入れない。ただダメなことをダメとだけ言うよりも、次に改善するためのメンタリティにつなげれるような言葉を使うことを心掛けています。
――通訳や練習の補助以外には、どのような仕事を?
ライチェル: 外国人選手の生活面のサポートです。細かく日本語で書かれている書類が家に届いた時、選手から「ちょっと見てほしい」と、簡単な翻訳と手続きの補助をお願いされることもあります。
――試合当日は?
ライチェル: まずはスタジアム外のセッティングの手伝いをしています。選手たちがスタジアムに入ってきた段階で、そこに合流してチームのサポートに回ります。ラガッツに入ったことで、現役時代は見られなかった裏方の動きをたくさん知ることができました。今まで自分が見えていなかった景色と気持ちを感じながら日々を過ごしています。私もできる限りのことを尽くして、ラガッツに貢献していきたいと思っています。
――ラガッツの魅力は?
ライチェル: 選手皆が真面目ですね。国籍を問わず、ラグビーに対し、突き詰めていくことが好きな選手が多い。私は普及活動の一環としてアカデミーのコーチングにも携わっていますが、子どもたちがラガッツの選手たちを応援してくれているのを実感しています。狭山市の皆さんからすごく愛されているチーム。私もそんなラガッツに携われて、とても幸せです。
――2年前には、妹さんとお父さんの母国であるフィジーでラグビー教室を行ないました。ラガッツに入ってからも、それは継続するつもりですか?
ライチェル: もちろんです。フィジーでの普及活動は、現地の子どもたちの選択肢を増やすという意味でも大事なことです。ラグビーに限らず、子どもたちの可能性をプラスにしていくお手伝いができたんじゃないかと思っています。
――ライチェルさん自身は現役時代、ケガに悩まされました。選手から体のケアについて相談されることは?
ライチェル: チームの中には、そういう話をする選手もいます。私は自分自身のケガについて、なぜそうなったのかを突き詰めて考えるタイプでした。だから、こういうことをした方がいいですよ、これが筋肉にいいですよ、といったアドバイスはしています。
――現役中にピラティスインストラクターの資格を取ったそうですね。それが今の活動にも生かされていますか?
ライチェル: それは、まだですね。ただシーズン終了後、選手のパートナーの皆さんと、練習場の芝生でピラティスセッションを開きたいと思っています。皆さんはシーズン中、いろいろと神経を使われながら選手たちをグラウンドに送り出しているはずです。その皆さんを慰労するようなかたちでのイベントを開催できたらと考えています。
――今、一番のモチベーションは?
ライチェル: 一番はチームが勝つこと。今季は目標としているD2昇格が達成できれば、何よりうれしいです。現役時代は、試合の結果という部分にこだわってきましたが、今はフィールドに立って戦う以外にも、多くの人の働きがあって試合が成り立っていることを知りました。例えば試合の運営準備など、選手がスタジアムに到着するまでの間にたくさんの事前準備が進められている。様々な支えがあって、お客さんがたくさん入る。その試合に勝った時の達成感は、ひと際大きいものがあります。
(取材/杉浦泰介、構成/二宮清純)
<バティヴァカロロ・ライチェル海遥(ばでぃゔぁかろろ・らいちぇるみよ)プロフィール>
1997年9月18日、東京都出身。フィジー出身の父親の影響で4歳でラグビーを始める。高校3年時には15人制・7人制の両方で女子日本代表に選出された。2018年にはアジア競技大会で7人制女子日本代表(サクラセブンズ)の金メダル獲得に貢献。21年の東京五輪には共同主将としてサクラセブンズを牽引した。25年に現役引退。今年1月よりリーグワン狭山セコムラガッツのチームスタッフに加わり、通訳、選手の生活や練習をサポートし、普及活動に努めている。
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