
リーグワンのリコーブラックラムズ東京は4月29日現在、ディビジョン1で4位に付けています。上位6チームまでが進めるプレーオフ(PO)には、第17節(5月1~3日)の結果次第で決まります。PO進出となれば2022年にリーグワンがスタートして以降、初めてです。もっとも奮闘しているのは選手だけではありません。さる4月5日、東京・秩父宮ラグビー場で行なわれた第14節のコベルコ神戸スティーラーズ戦において、「誰もが楽しめるラグビー環境」をコンセプトとする『ユニバーサルデー』を開催しました。
昨季に引き続き2回目の開催となったユニバーサルデー。第1回は障がい当事者、関係者を含め約200人を招待しましたが、今季は1.5倍となる約300人を招待しました。
秩父宮ラグビー場の正面入り口付近の広場は、試合開催時にはイベントスペースに早変わりしました。そこに物販、飲食、体験ブースなどを設けるのが通例ですが、ブラックラムズはその約半分をユニバーサルデー用の駐車場にしました。短期的な視点で見れば、物販・飲食のみならずスポンサー企業のブースを増やした方がより多くの利益を見込めます。
一般車両60台分の駐車スペースを用意した理由を、白﨑雄吾クラブ・ビジョナリー・オフィサー(CVO)は、こう説明します。
「今年3月、我々のクラブハウスに障がいのある人たちをお招きし、ワークショップを実施しました。昨年10月にパートナーシップを結んだサッカーのスペインリーグ、ラ・リーガのビジャレアルCFの佐伯夕利子さん(フットボール・マネージメント部スタッフ)に『ニーズが何かを聞くべき。想像で動くのはなく、現実に則して見ることが大事なんです』とアドバイスをいただいたので、ワークショップで皆さんの声を聞いた。それで分かったのは、来場に対する一番のボトルネックがアクセシビリティの問題だったんです」
重度障がい者が移動する場合、福祉車両などの大型車両を準備する必要があります。車椅子ユーザーは乗降時、十分な幅が必要となるため、60台分のスペースを確保したのです。
実際、来場者にも好評でした。チームに届いたアンケートをいくつか紹介しましょう。
<休憩室と駐車場を準備していただけたことが本当に助かり、「行ってみよう!」と思えたキッカケになりました>
<スポーツ観戦はバリアが多く、車いすの娘を連れて「行こう」という気になれないのですが、今回は駐車場の確保、横になれる休憩スペース(オムツ替えスペース)がある事で、私の心のバリアも取れて「行ってみよう」と一歩踏み出す事が出来ました。当日はスタッフの方の配慮も素晴らしく、とても気持ち良く過ごす事が出来ました。ありがとうございました。試合中の選手同士がぶつかる音に驚いたり、ゴール間際のスクラムに興奮したり、スタジアムでしか体験出来ない事でした>
<様々な理由から外出が難しい子どもにとって、今回の経験は大変貴重なものになったと思います。これまでテレビの中でしか見ることのなかったラグビーを実際に観戦でき、さらに選手の方々と直接お会いできたことは、視野を広げる素晴らしい機会となりました>
ユニバーサルデーを通じ、障がいによる“体験格差”を少しでも解消できたことは、大きな一歩と言えるでしょう。
会場のオーロラビジョンには聴覚に障がいのある人のために、場内実況の字幕を表示しました。これは聴覚に障がいのある人向けのコミュニケーションサービス『Pekoe』を応用したものです。字幕の表示は、聴覚に障がいのある人のみならず、実況を聞き逃した人やプレーを見逃した人にとっても観戦の手助けとなっていました。
また視覚に障がいのある人やラグビー初級者向けに『BlackRams Radio』を配信し、様々な障がいに応じた観戦スタイルを提供しました。
再び白﨑CVOです。
「(駐車場を増やして)昨年、来たくても来られなかった人たちをお呼びできたという点は良かった。また大型ビジョンに『Pekoe』を文字投影できたことも大きな一歩になったと思っています。健聴者の人が、字幕の必要性、文字情報の大切さを知るきっかけにもなる。ユニバーサルデーを通して、多くの人に気づきを与えられればうれしい」
今回のユニバーサルデーについて、タンバイ・マットソンヘッドコーチ(HC)にも話を聞きました。
「普段スタジアムでラグビーを観る機会のない人たちが楽しんでいる様子を見ることができて良かった。その裏で、1日サポートをしてくれた人たちがいると思うので、感謝を伝えたい」
――ユニバーサルデーがチーム、選手にもたらす影響は?
「選手たちにとっては、社会と関わることがとても重要。障がいがある人との交流、学校でのラグビー体験会、老人ホームへの訪問など、いろいろな人たちと出会って、社会を知り、経験することが重要だと考えている。車椅子用の駐車場など特別な手配が必要なことを認識するのも大事。そして、1日だけのイベントではなく何度も行なうことで、『特別』から『ノーマル』になっていく。今回来てくれた家族にとって、試合観戦は特別なイベントだったと思うので、例えば今後も練習を見にグラウンドに来て交流を図ったり、イベントを続けていけるといい。今回はノンメンバーが(障がいのある人と)一緒に試合を見て非常にいい経験になったが、練習に来てくれたらゲームメンバーも含めてみんなでサポートできるし、それがチームにとってプラスになる」
特別からノーマルへ――。白﨑CVOは「理想を言えば、毎試合、当たり前のように実施したい」と語りました。ユニバーサルデーを日常の風景にしたい、というのが最終ゴールです。
(取材/杉浦泰介、構成/二宮清純)
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