
7月4日、新設の国際大会ネーションズチャンピオンシップ初戦が東京・秩父宮ラグビー場で行なわれ、世界ランキング12位の日本代表が同10位のイタリア代表を27対10で破りました。日本代表は4人が初キャップを記録しました。その中でひと際輝きを放ったのが、明治大学生4年生のスタンドオフ、伊藤龍之介選手です。
伊藤選手は身長172センチ、体重77キロと小柄な部類の選手ですが、ラグビーセンスに優れ、ラン、パス、キック、戦術眼に秀でた大学ナンバーワンの司令塔です。國學院栃木高校で3年連続花園に出場し、2年時にはスタンドオフとしてチームを準優勝に導きました。3年時には高校日本代表にも選ばれています。2023年に進学した明大では、2年生からレギュラーの座を掴み、3年時には大学日本一に輝きました。ちなみに兄と妹もラグビー選手。兄の耕太郎選手はリーグワンのリコーブラックラムズ東京でプレーしています。
伊藤選手が初キャップを記録したネーションズチャンピオンシップは、北半球の強豪6カ国・地域(イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、フランス、イタリア)と南半球の強豪4カ国(ニュージランド、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチン)にフィジーと日本を加えた12チームによる対抗戦形式の大会です。2組(北半球と南半球グループ)に分けられ、日本とフィジーは南半球グループに入りました。7、11月に3試合ずつ戦い、その後順位決定戦に臨みます。
大会前、伊藤選手を日本代表合宿に招集したエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は「世界で有数の10番になれる。素晴らしい視野、パスやランのスキルを持っている。若さゆえにミスもあるものの成長が期待できる」と高く評価していました。
ところが、そのエディーHC、4月の不適切発言の処分により、イタリア戦ではニール・ハットリーコーチングコーディネーターがHC代行として指揮を執りました。
前半5分に先制を許した日本は、その後、伊藤選手とスクラムハーフ齋藤直人選手がキックを駆使し、相手のスペースを突くなど、積極的に攻めました。11分にロックのワーナー・ディアンズ選手のトライ、フルバック松永拓朗選手のコンバージョンキックで追いつきました。
17分には伊藤選手のパスからセンター廣瀬雄也選手が抜け出し、最後は松永選手がトライエリア中央に飛び込みました。
前半を17対10とリードして終えると、後半7分にフランカーのベン・ガンター選手がトライ。松永選手がコンバージョンキック、そしてPGを決め、リードを広げます。守っては相手を後半無得点に抑え、27対10で8年ぶりにイタリアに勝利しました。
フル出場した伊藤選手が得点に絡んだシーンは1つでしたが、随所に好判断を披露しました。後半20分には自陣でボールを受けると、すぐに蹴り出さず、落ち着いて味方へパス。廣瀬選手の好キックを演出しました。
22分には敵陣左でボールを持つと、外側(左)に走ると見せかけ、方向転換。逆サイドへキックパスを送ります。低い弾道でポッカリと空いたスペースに飛んだ楕円球はウイング植田和磨選手の手にこそ渡りませんでしたが、もしキャッチできていれば絶好のトライチャンスになるところでした。
試合後、21歳の若き司令塔について、イタリア代表のゴンサロ・ケサダHCはこう評しました。
「正直言いますと、9番(齋藤選手)と10番(伊藤選手)が日本代表の弱点だと思っていた。齋藤選手はフランスでTOP14ファイナルを終えたばかりだったから。伊藤選手はまだ若く、大学レベルから来て初めてのテストマッチということで、彼にとってタフな試合になると予想していました。日本全体が良かったという点はありますが、特に伊藤選手が実践したプレーはすべて良かった。本人のキャラクターが、きちんと出ていた。持ち味のスピードを発揮し、スペースの見極めもできていた」
敵将に褒められるのは本物の証拠です。
明大の4学年先輩にあたるウイング石田吉平選手も舌を巻いていました。
「一つひとつのプレーに迷いがない。こうと決めたらこうと、司令塔がはっきり示してくれると僕たちもやりやすい。龍はランもできる選手なので、相手にとってはすごく脅威になっている。選択肢が多く、唯一無二の選手です」
さて日本代表は次節、11日にオーストラリアで世界ランキング3位のアイルランド代表と対戦します。「どの相手に対しても、しっかり準備して自分たちが何をやるか明確にして、100%の準備ができれば、自ずと結果がついてくると思います」と伊藤選手は語り、続けました。
「今日は、たくさんの味方選手にいろいろ助けてもらいながら、こういう結果になった。まだまだジャパンの一員として、(チームを)引っ張れる自信はないですが、ここからあと何試合かあるので、しっかり自分で引っ張っていけるようになったら、ワールドカップも見えてくると思います」
現在、日本代表の司令塔争いは、昨年のテストマッチ全11試合で10番を付けた李承信選手が一歩も二歩もリードしています。だが今回の代表活動は負傷により、招集されていません。ネーションズチャンピオンシップの活躍次第では、伊藤選手がその座を脅かす存在になるかもしれません。
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