
日本ラグビー協会は8月25日、女子15人制日本代表(サクラフィフティーン)の新代表ヘッドコーチ(HC)に、男子15人制日本代表43キャップを持つ北川俊澄氏の就任を発表しました。
発表当日に行なわれた就任記者会見で、北川新HCは、こう意気込みを述べました。
「代表チームを引き受けることに責任を感じています。このチームで新しい歴史を築いていくことはとても楽しみです。サクラフィフティーンをより強化し、さらに魅力あるチームにしていきたい」
北川新HCは1981年、京都府生まれの45歳です。現役時代は195センチの長身を生かし、ロックでプレー。伏見工業高校、関東学院大学、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、日野レッドドルフィンズでキャリアを重ねました。日本代表としては通算43キャップ、2011年W杯イングランド大会に出場しています。
現役引退後はレッドドルフィンズ、高校日本代表のほか、女子のクラブチームを指導した経験を持ちます。サクラフィフティーンでは昨年のアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)でフォワードコーチを務め、今年のARCではHC代行として指揮を執りました。
就任にあたり、サクラフィフティーンの強みであるセットプレーを生かしつつ、攻守にスピーディーなラグビーを目指す、としています。
以下は、サクラフィフティーンの強化や運営を統括する有水剛志ディレクター・オブ・ラグビー(DOR)のコメントです。
「北川HCは40歳まで現役を続けたレジェンド。コーチ経験そのものはそこまで長くはないのですが、女子のクラブチームYOKOHAMA TKMさんにも関わってきた。彼のコーチングのエリアはラインアウト、フォワード、プラスディフェンス、ブレイクダウンにまで及ぶ。スタッフを編成するにあたり、アタック担当のバックスコーチを含め、誰をHCに据えるか、見極めていく中で、アジア・ラグビー・チャンピオンシップでHC代行をやってもらった。そこでのチームのマネジメント、リーダーシップを踏まえ、HCを任せられると判断しました」
有水DORは、さらに続けます。
「男性コーチと女子選手の関わり方は、重要なポイントです。他のコーチ陣を選ぶ上でも、その視点はすごく大きかった。女子選手とフラットにコミュニケーションを取れるかどうか。どうしても上から目線になりがちですから。彼にはそれ(上から目線)がなかった」
言うならば、「上から目線」ではなく「横から目線」の指導者ということでしょうか。有水DORの話を聞いていて思い出したのが、2011年女子W杯ドイツ大会で女子サッカー日本代表(なでしこジャパン)を世界一に導いた佐々木則夫元監督(現・女子ナショナルチームダイレクター)です。
佐々木さんは自著『なでしこ力』(講談社)で、理想とする指導者像について、こう述べています。
<コーチの語源は、「馬車」だ。コーチという言葉には、「人をある地点まで送り届ける」役目を担う人、という意味がある。ではコーチが馬車なら、選手はなんだろう。答えは「乗客」だ。間違っても、選手は「馬」ではない。コーチ、つまり指導者の仕事とは、選手を馬のようにムチで叩いて走らせることではなく、乗客である選手たちを目標の地まで送り届けることだ>
そのためには「上から目線」ではなく「横から目線」で選手たちに接することが大事だと佐々木さんは説いています。
さてサクラフィフティーンは過去W杯10大会中6大会に出場し、最高成績は1994年スコットランド大会の8位です。前回の2025年イングランド大会では1勝2敗で1次リーグ敗退に終わりました。レスリー・マッケンジー前HCの下、セットプレーは安定してきたものの、フィジカルで上回る相手を凌駕するだけのアタックの構築は、まだ道半ばです。
北川新HC率いる新チームの初陣は9月4日、福岡でのフィジー代表戦です。その後は9月下旬から10月下旬にかけて、国際大会WXV Global Seriesに出場し、それぞれ2度ずつアイルランド代表、イタリア代表と戦います。
北川新HCは「WXVは、世界ランク5位のアイルランド戦が最大のターゲットになる。現在の実力を確認し、自信を得たい」と抱負を口にしました。
(取材/杉浦泰介、構成/二宮清純)
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