
大学ラグビーのシーズン開幕が迫っています。関東大学ラグビー対抗戦グループAは9月12日にスタートします。日本代表として活躍中のスタンドオフ伊藤龍之介選手(4年)を擁する明治大学は、対抗戦、全国大学選手権の連覇がかかっています。今季から指揮を執る高野彬夫監督に注目してみます。
高野監督は、今年4月からスタートしたばかりの監督生活を「間違いなく楽しめています」と振り返り、こう続けます。
「監督になったからと言って、大きく何かを変えることは、基本的にありません」
明大が今年度の大学選手権連覇を達成すれば、1995~96年度以来、30年ぶり3度目となります。
明大OBの高野監督、4年時には主将を務めました。卒業後はクボタに入社し、スピアーズで8シーズンプレー。引退後はフラン・ルディケヘッドコーチ(HC)の下、アナリスト、守備担当のアシスタントコーチとして、チームをリーグワンの強豪へと押し上げました。
24年6月に明大のHCに就任。9学年先輩の神鳥裕之前監督の参謀役として、昨年度の対抗戦優勝、大学日本一を支えました。
神鳥前監督は高野監督を「いつも前向きな言葉で意見をくれる。監督は孤独。チームがよくない雰囲気の時にポジティブに転換できる人物です」と評しています。
昨年8月下旬、部員の飲酒が判明し、チームが分裂しかけた際、東京・八王子市の高尾山で登山レクリエーションを実施するアイディアを提案したのも高野監督でした。神鳥前監督は「様々な場面で私の判断の助けになった」と感謝を口にしていました。
さて高野監督はどんなチームを志向しているのでしょう。
「(選手が)言われた通りにするのは上手でも、応用が利かなくなるのが嫌なんです。だから彼らで解決しようとしていることはできるだけ、口を挟まない。もし自分たちで解決できないことがあれば、自分に聞いてくれ、と言っています」
前所属のスピアーズ、ルディケHCの影響が大きいようです。
「衝撃的だったのは、僕がコーチになった時です。フランさんの右腕だった外国人コーチが抜けると、その役割を僕に任せてくれた。さらに“オマエの好きなようにやれ”と。もちろん、たくさんの人からサポートしていただきましたが、これだけ結果を求められている世界で、素人コーチに1つの分野をバーンと任せ、“好きなようにやれ”と言える度量にビックリしました。フランさんは人に任せて、責任を持ってくれる方です。その“チームにいる人間をしっかり育てよう”という考え方が僕は好きでした」
高野監督は天理高校時代の恩師、田中克己さんからも大きな影響を受けました。2年前に72歳で亡くなった田中さんは、同校を2度の花園優勝に導いた名将です。「克己先生の教えで一番頭に残っているのは、“ラグビーはフットボールだぞ”ということ。だから、キックをうまく使って戦うというのが、戦術の根本にある」と高野監督。
昨年の大学日本一を経験した主力としては、伊藤選手のほか、日本代表予備軍のJAPAN XVに選出されたフルバック竹之下仁吾選手(4年)、U23代表ウイング白井瑛人選手(3年)、海老沢琥珀選手(4年)らが残っています。高野監督は「勝利にもこだわりますが、見ている人が面白いと思えるようなラグビーを目指したい」と抱負を口にしました。
(取材/杉浦泰介、構成/二宮清純)
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