
昨季リーグワン・ディビジョン1で最下位(12位)に沈んだ三菱重工相模原ダイナボアーズが、このオフ大型補強を敢行しました。南アフリカ代表ウイング/フルバックのカート=リー・アレンゼ選手ら7人を獲得。その中で、興味深い経歴を持つ選手が1人います。イングランドのエクセターチーフス・アカデミーから加入した、身長186センチの長身プロップ安藤啓太選手です。
東京都出身、21歳の安藤選手は、5歳から海外で生活し、スコットランドのU18、U20代表に選出された経歴を持つ国際派です。これでダイナボアーズが獲得した“逆輸入選手”は、昨季のスタンドオフ三宅駿選手(15歳から23歳までニュージーランド)と今季コベルコ神戸スティーラーズから加入したウイング濱野隼大選手(14歳から高校卒業までニュージーランド)を含めて3人目になります。
編成をはじめ、チーム運営全般を担うチームディレクター(TD)の沼田一樹さんに話を聞きました。
「“逆輸入選手”を意識して獲っているわけではないんです。海外のラグビーをいつもチェックしていますし、我々のスタッフにもカンタベリー出身の者が多いので、そのネットワークを生かしています。そこから来る情報を得ながら、我々のチームに合う選手をリクルートしています」
リクルーティングにおいて意識しているのは「先手必勝」だそうです。
「一番大事にしているのは、最初に手を上げること。選手も一番に誘ってくれたチームの印象が強いと思うんです。そこを意識しながら、いつもアンテナを張り巡らしています」
沼田TDは毎シーズン、海外に赴き、現地でプレーする日本人選手をチェックしています。
安藤選手の存在を最初に知ったのはSNSだったといいます。
「エクセター・チーフス(イングランド)に安藤啓太という日本人がいる。それでフォローしていったら親の実家が厚木だと分かったんです」
そこから本人にコンタクトを取り、ダイナボアーズの練習に招待しました。
もっとも、目を付けた選手に熱意を示す方法は、早さだけではありません。安藤選手については、最初にオファーしてから約1年半の歳月を要しました。ラブコールを送り続けた沼田TDの熱量が安藤選手に届いたのでしょう。
沼田TDはこう期待を寄せます。
「新たなレギュレーション(カテゴリ区分の変更)という意味でも日本人選手が多く必要になってくる。また安藤選手は1番(左プロップ)も3番(右プロップ)もできる、ワークレートの高い走れるプロップです。我々にとっていいリクルートになった」
昨季加入した三宅選手の獲得に際しては、他チームとの争奪戦を制しました。三宅選手はニュージーランドの永住権取得のため、年間184日以上ニュージーランド国内で過ごす必要があります。1年の半分以上も、日本を不在にするという条件を受け入れた上で獲得に手を挙げたのがダイナボアーズでした。
沼田TDは言います。
「正直、途中合流というのは、戦術理解やチームにフィットする上でデメリットがあります。それを差し引いてでも我々としては、彼に司令塔としてチームを牽引してほしかった」
三宅選手によれば、入団の決め手となったのは、ダイナボアーズが「ニュージーランドで永住権を取るための向こうへの行き帰りの面などで柔軟に対応していただいた」からです。
昨季(25-26シーズン)、三宅選手は入れ替え戦を含む、15試合で10番を背負いました。強気なランと冷静なゲームメイクで、沼田TDの期待通り、ダイナボアーズの攻撃を牽引しました。
最後に安藤選手に話を戻しましょう。「走れるプロップ」といえば日本では埼玉パナソニックワイルドナイツの稲垣啓太選手が代表格です。奇しくも2人は身長(186センチ)、体重(116キロ)、そして名前も同じ。ダイナボアーズ浮上の切り札としての期待が高まります。
(取材/杉浦泰介、構成/二宮清純)
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